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くらやみまちからの手紙

2026.9.28── 映画をめぐって / 九月最後の月曜日

2026.09.28

映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』をめぐって、
まるで想いが胸に詰まってしまって、言葉が喉に渋滞しているような思いなのですが、今この瞬間に浮かぶことを、ただ、言葉に紡ぎたいと思いました。
どんな言葉を以ってしても、言い表すことのできない場所に、映画はあるのだということを、安らぐべく真実として、受け容れたいと思います。

いま監督として、この映画について望む事は、観てくださる方にとって、この作品がどうか、大切な人との関係を和らげるものであってほしいということです。それが、永く雨の降り続く、九月最後の月曜日の願いです。

大切な古い友人の河合健監督が、真夏の試写会へといらしてくださり、
「この作品は、大衆映画だね。良い意味でこの言葉使ったの、久しぶりだよ」
上映後、珈琲を飲みながら笑ったこと、
「どんな映画でも、観終わった後に、考える時間が欲しいというのか、一人になりたくなる。でもこの映画は、早く家に帰って家族の顔が見たくなる。そういう映画だったよ」
そう話してくれたことが、どんなことよりも、至上のことに思えました。
「そんな映画は、初めてだったから」
われわれは、帰路に分たれてゆく──

雨音の気配を見つめて。
ほんとうの意味での大衆映画を作りたい。
大衆など、どこにも存在しないのだということを、永遠に神へと誓いながら、
映画館の暗闇は、常に差し迫った二人が対面する場所であり、
ただ、あなた一人だけを、スクリーンは目掛けているのだということを、
あなたの到来を待ち続けるように、劇場の全ての照明を落として、
あなただけに降り注ぐような、光の線を数え続ける。
あなたがそれを拒んでも、
あなたの街の映画館まで、
あなたの生活を、追い掛けてゆく。

転倒する。生活こそが夢になる。
点灯する。夢が生活になるように。

そのために、生まれてきたのだと、
まったく後生のかんちがいなのだとしても、
尽き果てるまで、真剣に耄碌していたい。

………

映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』
2026年10月2日(金)全国ロードショー
https://www.mamaseka-movie.com/

東映本社にて
撮影:小野啓

まちの映画監督

山戸結希 / YAMATO YUKI

山戸結希 / YAMATO YUKI

2012年、上智大学哲学科在学中に独学で監督した映画『あの娘が海辺で踊ってる』でデビュー。

2014年、映画『おとぎ話みたい』にて、日本映画プロフェッショナル大賞新人賞を受賞。

2016年、映画『溺れるナイフ』が60万人以上を動員し、20代女性の監督作品において前例のない興行記録となる。

2018年、初の企画・プロデュースを務めた映画『21世紀の女の子』──“ジェンダーあるいはセクシャリティがゆらいだ瞬間”をテーマとしたオムニバスが、東京国際映画祭にて特別上映。
翌年、監督を務めた『ホットギミック ガールミーツボーイ』と共に称賛され、TAMA映画賞最優秀新進監督賞を受賞。

2021年、初のテレビドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』のシリーズ構成と監督を務める。CX『セブンルール』にて、「新世代の映画監督 若手俳優が出演熱望する青春映画の名手」として特集される。2024年、NHKゴールデンタイムのドラマ『燕は戻ってこない』の演出を担当する。

これまでMrs. GREEN APPLE、RADWIMPS、backnumber、乃木坂46らMusic Video映像監督を務め、ジャンルを超えたみずみずしい映像表現に定評がある。

2026年10月2日、映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』が、全国ロードショーとなる。