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くらやみまちからの手紙

2026.10.25── すべての波乱は、観客の生活の内に

2026.10.25

監督映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』が、封切り3週目の興行を終えて──
第1位をいただいた公開初週の動員をふたたび上回り、先週末時点での動員が154万人を超え、興収は22億円を突破し──改めて2週間ぶりに、日本の週末興行成績ランキング第1位へと、返り咲く結果をいただきました。

すべての波乱は、観客の生活の内にのみあるということを、その生命が歴史をかたちづくるように脈打ちながら、お一人おひとりに、与えていただいています。
映画は、映画館の暗闇で、生きている──

映画を観るのには、2000円以上もかかって、往復も含めたら何時間も割かれる、その捻出と調整のすえ、見も知らぬ人の呼吸を聴きながら、身動きの取られない暗闇に、この身を任せることになる。
予告篇を入れたらゆうに130分間を超えるこの拘束は、心身に強い負荷を掛けるメディア形式である。

それでも、観に来てくださったということを、映画館の暗闇に、足を踏み入れていただいたことを、その意味に内包される幾千を、否、150万回の選択を、忘れないでいたい。

劇場に息づく呼吸のすべてを、目を閉じたなら、すぐに聴き取られる人間でありたい。
ただ一人、あなたの呼吸を、聴き逃さずに、生きてゆきたい。
この作家生命が絶えるまで。
星に願うように、願います。

──(あなたの)人生の変わる振動を感知する夜に。
映画の感想というのは、オンラインに刻まれ、示され、残されるのは、ほんの一部だけれど、
それでもなお、無数の音の、その鳴り響きが、胸の真芯まで届いて。
あの娘の人生が、かたちを変えてゆく響きがある。
倍音になって、取り囲まれては、囚われて、今もずっと、眠られません。
横たわると、ああ、幻だったのかなと、腹の底から涙が出てきます。

このような今は、
観客のお一人おひとりのお力に、ただ一人のその存在の大きさにこそ、ほかなりません。
あなたからのこの、まばゆくて疑わしくて、それでもどんなものよりも重い、抱え切れないけれども背負い続けたい贈り物に、心より深く、御礼申し上げます。

………

2026年10月16日19時30分頃
大ヒット記念トークショーを開催いただいた新宿バルト9にて

お馴染みとなりつつあります、
「観客の、あなたがいちばん」のポーズを、
初心忘るべからずな想いに付け込むように、毎回お願いして、していただいています……

あなたがいちばんの、特等席にいることを、
絶対に、全身で、見失わないで、
これからも、これまでも、
どうか、どんなことが、未来に起こっても。

まちの映画監督

山戸結希 / YAMATO YUKI

山戸結希 / YAMATO YUKI

2012年、上智大学哲学科在学中に独学で監督した映画『あの娘が海辺で踊ってる』でデビュー。

2014年、映画『おとぎ話みたい』にて、日本映画プロフェッショナル大賞新人賞を受賞。

2016年、映画『溺れるナイフ』が60万人以上を動員し、20代女性の監督作品において前例のない興行記録となる。

2018年、初の企画・プロデュースを務めた映画『21世紀の女の子』──“ジェンダーあるいはセクシャリティがゆらいだ瞬間”をテーマとしたオムニバスが、東京国際映画祭にて特別上映。
翌年、監督を務めた『ホットギミック ガールミーツボーイ』と共に称賛され、TAMA映画賞最優秀新進監督賞を受賞。

2021年、初のテレビドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』のシリーズ構成と監督を務める。CX『セブンルール』にて、「新世代の映画監督 若手俳優が出演熱望する青春映画の名手」として特集される。2024年、NHKゴールデンタイムのドラマ『燕は戻ってこない』の演出を担当する。

これまでMrs. GREEN APPLE、RADWIMPS、backnumber、乃木坂46らMusic Video映像監督を務め、ジャンルを超えたみずみずしい映像表現に定評がある。

2026年10月2日、映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』が、全国ロードショーとなる。

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