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くらやみまちからの手紙

2026.10.28── 烈しい運命の交わる場所で

2026.10.29

去る10月16日に行われました、新宿バルト9にての、大ヒット記念トークショー付き上映会を終えて──

まっすぐな眼差しを持つ高杉さんの隣で浴びた、お一人おひとりからのあたたかく、お優しい「おめでとう」が、今も胸に響いています。心より、有り難うございました。

「最後に、監督から観客のみなさんへ、メッセージをどうぞ」と締めのパスをいただき、
最後にマイクを授かった際、ティーチインで手を挙げてくださる沢山の方を差し置いて、ご挨拶に入らざるを得なかったことに(ただただ、自身への不甲斐なさで)胸の真芯がグッと掴まれ、用意していたお話を飛ばしてしまい……、「あなただけの作品にしてください」と、いつも考え続けていることのみを発語するかたちとなりました。それもまた、最前の本音そのものなのですが、やはりあの祝祭空間に浮き足立っていたのか、悔しさにも、追い掛けられました。

instagramの方にも、その件への想いを当夜に書き残させていただきました。
https://www.instagram.com/p/Dejn19cpwRv/

もはやどのようにしたとしても、当夜は届かぬ場所にあり続けるのですが、あの日、あの地点でお伝えさせていただきたかった言葉を、みなが未来を生きる今に往生際悪くも、この場所にて、残させていただけましたら、幸いに思います。

「最後に、監督から観客のみなさんへ、メッセージをどうぞ」

………

映画館という場所は、それぞれの人生が交わる時空なのだと──
その交歓は、映画を通して為されます。
いえ、為され得るはずだと言うべきでしょうか。

かつて純然たる観客だった季節、スクリーンへと向かって、もっと自分の人生に関与してほしいと、願っていました。
もっとわたしの人生に触れてほしい、
もっとわたしの心に近づいてほしいと、せつに願っておりました。

その願いの乱反射を映画に込める今、そんなふうに目に見えないものまでもが、果たしてどれだけ伝えられるのか、わかりません。
撮りながら、信じ続けることしか出来ません。
明るい場所で、どんな言葉を発したとしても、暗闇においてしか、そこに灯される光においてしか、証明は果たされません。
あと数分ののちに、この新宿バルト9最大のスクリーンに放たれるこの作品が、
あなたの人生に触れられるような、心に近づいてゆく一本になれたなら──この今に、この空間で、そんな映画としてくださったなら本当に嬉しいです。

日本に暮らしていると、海外の方のように、隣り合った人と気軽にお話したり、たとえば映画館でも、上映中に声を上げてのリアクションをあんまりしませんね。
ではそこに、コミュニケーションは、存在していないのでしょうか?
そんなこと、ないのだと思います。
この風土に生きるわたしたちは、もしかして世界中のどんなコミュニティよりも、お互いの温度を、気配を察し合う種族なのだと思います。
空間に張り巡らされたコンテクストがあり、目に見えないものに、たくさんのコミュニケーションが息衝いている──

沈黙の中にある色を読み、揺れを感じ、呼吸に囚われてしまう、わたしたちだからこそ、あなただからこそ、
スクリーンに神経を注ぎながらなおも、この一回性を芸術として受容し得る、最高の劇場体験へとまたひらかれているのです。

金曜日の夜、新宿の街の一席に辿り着くというのは、なんて特別な人生なのだろうと感じてしまいます。
そう選び取らないと、叶わないから──
今ここで暗闇を待つ誰しもが、主体的な選択の先に、存在されているのだと。

今夜、こんなにも烈しい運命の交わる場所で、この世界で、たった一度きりの、
映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』を、ご体験くださるのですね。
この高い天井まで満つる願いのなかで、
あなたの心に、触れられますように。

あり得たかもしれない、あり得るはずだった──2026年10月16日の東京・新宿バルト9へと向かって

まちの映画監督

山戸結希 / YAMATO YUKI

山戸結希 / YAMATO YUKI

2012年、上智大学哲学科在学中に独学で監督した映画『あの娘が海辺で踊ってる』でデビュー。

2014年、映画『おとぎ話みたい』にて、日本映画プロフェッショナル大賞新人賞を受賞。

2016年、映画『溺れるナイフ』が60万人以上を動員し、20代女性の監督作品において前例のない興行記録となる。

2018年、初の企画・プロデュースを務めた映画『21世紀の女の子』──“ジェンダーあるいはセクシャリティがゆらいだ瞬間”をテーマとしたオムニバスが、東京国際映画祭にて特別上映。
翌年、監督を務めた『ホットギミック ガールミーツボーイ』と共に称賛され、TAMA映画賞最優秀新進監督賞を受賞。

2021年、初のテレビドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』のシリーズ構成と監督を務める。CX『セブンルール』にて、「新世代の映画監督 若手俳優が出演熱望する青春映画の名手」として特集される。2024年、NHKゴールデンタイムのドラマ『燕は戻ってこない』の演出を担当する。

これまでMrs. GREEN APPLE、RADWIMPS、backnumber、乃木坂46らMusic Video映像監督を務め、ジャンルを超えたみずみずしい映像表現に定評がある。

2026年10月2日、映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』が、全国ロードショーとなる。

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